見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました


「和哉さん、お帰りなさいませ……え?」


どこかから現れた四十代後半くらいの割烹着姿の家政婦さんが和哉さんに頭を下げ、そして彼の足元に隠れるように立っている勇哉に気づき動きを止めた。

続けて家政婦さんの視線は私にも向けられ、これはいったいといった様子で口をポカンと開けた。


「父さんと母さんは?」

「旦那様も奥様もそろって居間にいらっしゃいますよ」

「ありがとう。こっちだ」


和哉さんは家政婦さんに軽く微笑みかけてから、私を促す。

靴を脱ぐと、家政婦さんが私の前に素早くスリッパを出してくれて、「ありがとうございます」と頭を下げつつそれを借りた。

「和哉さんの子どもの頃にそっくりだわ。なんてお可愛いこと」と、聞こえてきた家政婦さんの嬉しそうな声にはにかみつつ、和哉さんに続いて廊下を歩き出す。

引き戸の前で彼の足が止まれば、この扉の向こうに和哉さんのご両親がいるのだと、一気に緊張感がわき上がる。

そっと手を握られ視線を上げると、和哉さんが微笑んだ。

まるで「心配ない」と眼差しで話しかけられたようで、わずかに肩の力が抜けていく。

和哉さんの手が離れ、残った温もりを閉じ込めるように軽く拳を握りしめた。

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