見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
静かに和哉さんが引き戸を開けると、室内で戸惑いの声が上がった。
「……いや、ちょっと待ってくれ。私たちも何が何だか」
困っているのは和哉さんのお父さんで、誰かと電話中だった。
そしてその傍らで、和哉さんのお母さんがはらはらとした様子でお父さんを見つめている。
「息子はまだ帰宅していないが……」
和哉さんの話をしていると言うことは、もしかして、電話の相手は金城さんだろうか。
そんなことを考えていると、和哉さんがこちらに気づかせるように開けたままの戸をノックした。
音につられて、和哉さんのお母さんが視線を移動させ、「和哉」と呟く。
それに和哉さんのお父さんも反応し、受話器を耳に押し当てたまま振り返る。
「今、ちょうどお前の話を……」
和哉さんのお父さんの言葉はそこで途切れた。そして、その傍らで和哉さんのお母さんが手で口を覆い、「ああ」と声を震わせた。
ふたりとも、私と和哉さんの足元で様子をうかがっている小さな姿に気づいたようだった。
「話があって戻ってきたんだが、時間を改めた方が?」
「いや。構わない、座ってくれ」