見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました


「……わかりました」


悔しげに呟かれたひと言を聞き、和哉さんは改めて頭を下げた。私もつられて頭を下げたのち、彼に手を引かれてその場を後にした。

一度も立ち止まる事なく、小走りで和哉さんの車まで戻って、ふたり揃って大きく息をつく。

静かな車内で緊張の抜けた顔を見合わせて、苦笑する。


「うまくいきました……よね?」

「あぁ。諦めてくれたと思う。ありがとう」


感謝の言葉と共に和哉さんに頭を下げられ、私は慌てて両手を振った。


「あぁ、そんな。やめてください、和哉さん。私は隣に立っていただけで、何も出来ませんでしたから」

「いや。そんな事ないよ。結衣が隣にいてくれて、どれだけ心強かったか」


それは仲間意識からの言葉で、私に特別な感情など持ってない。ちゃんと分かっていても、彼の返しに鼓動が大きく反応した。

熱くなった顔を見られたくなくて思わず視線を逸らすと、和哉さんも自分の今の言葉に恥ずかしさを覚えたらしく、「あ、えっと……」とたどたどしく話を続けた。


「彼女、前に俺と結衣がデートしている所を見てるんだ。数日後、彼女、会社までやってきて、最近女性と楽しそうに一緒にいる所を見かけたけど、どこの誰ですかって、不満をぶつけられたよ」

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