見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
ヤギサワホールディングスは、食品サービス事業をメインに展開し、百貨店や金融サービスをも行う有名企業である。
学生と社会人という点だけでも、彼と見えている世界が違うのだろうなと感じていたと言うのに、相手はそんな大企業の御曹司だと知ったら余計に、自分とは違う世界に住んでいるような気持ちになる。
以前のように気軽に声をかけたり会ったりするのも、遠慮するようになっていったけれど、私が無意識に作っていた壁を、和哉さんが易々と破ってくれた。
「すごいのは父で、俺じゃない。俺は普通だから、でも父の高みまで登らないといけなくて、毎日必死だよ。まだまだ辿り着けそうにない」
話してくれた時の、寂しそうで苦しげでもある彼の横顔を私は今でも覚えている。
「俺をヤギサワの息子じゃなくて、八木沢和哉として見て欲しい。結衣には、今まで通りでいて欲しいんだ」
大企業の御曹司であるために、これまでたくさんの苦労があって、そしてこれからもきっと、立場ゆえの苦しみが和哉さんには付き纏うのだろう。
切なく瞳を伏せる和哉さんを目にした瞬間、勝手に体が動いていた。私は彼の右手を両手で包み込む。