見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました

その瞬間、不安が一気に膨らみ弾け飛ぶ。

もしかして事故を起こしてしまったとかと嫌な予感に突き動かされ、すぐさま通話の発信ボタンをタップした。

ヤギサワホールディングスは目と鼻の先にあるため、仮に事故を起こしていたとしても、もっと近距離でサイレンが聞こえるはず。

だから、もっとずっと遠い場所で今鳴っているのは、和哉さんと関係ない。

そう頭では冷静に思考を組み立てられるのに、心が不安で押しつぶされそう。


「お願い和哉さん、電話に出て」


元気な声を聞かせて欲しい。

強い願いは届かず、コール音は繰り返され、じわりと涙が目に浮かぶ。

お腹が空いても、喉が渇いても、彼と入れ違いになるかもとこの場を離れる踏ん切りすらつかない。

時折涙で視界を滲ませながら、和哉さんがやって来るのをひたすら待った。

既読はつかない。電話も出ないし、かかっても来ない。

ぽつんと、この世にひとり取り残されてしまった気分で、私は彼が一分でも一秒でもはやく、目の前に現れるのを願い続けた。

入り口に設置されているアーチ型の車止めに腰掛けたり、その付近をウロウロ歩いてみたりしているうちに、肌寒さは増していく。

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