見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
腕をさすってからスマホで時刻を確認し、小さくため息をついた。
「さすがにお腹空いたよ、和哉さん」
表示されている時刻は、九時半。
もう帰ってしまおうかと考える度、「ごめん、待たせた」と申し訳なさそうな顔をして彼がもうすぐ駆け寄ってくるかもしれないからと、この場に足が留まる。
ここからではビルが見えないのは分かっているけれど、ヤギサワホールディングのある方角へと視線を向けてはため息をつく。
到着した頃は駅に向かう人が多かった。
けれど今は駅から自宅への流れが主のようで、ぼんやりしている私の前を買い物袋を下げて寄り添い歩く男女が何組も通り過ぎていく。
その楽しげな姿に、本当だったら私も今ごろ和哉さんの隣で笑っていたはずなのにと気持ちが沈んでいく。
和哉さんのお嫁さんにして欲しいと言うつもりだった。
特別な誕生日にするはずだったのに、どうして私はひとりでいるのだろう。
和哉さん、いったいどこにいるの? どうして電話に出ないの? スマホは手元にないの?
あと十分だけ待ってみよう。
あともう少し……、もう少ししたらきっと彼は来てくれる。