見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました

行き先は、誕生に待ち合わせをしたあの公園。彼との思い出にかすかな希望を持ってやって来てはみたものの、彼の姿はない。


「仕方ないよね。今の時間なら、まだきっと仕事中だもの」


呟いてから、ヤギサワホールディングスのある方へと体を向け、ゆっくりと歩き出した。

専務室に乗り込むのも、ましてや会社のビルの中へ足を踏み入れる勇気すらないくせに行ってどうするのよと自問自答するも、足は止まらなかった。

歩いて十分ほどで目の前に六十階近いヤギサワホールディングスの本社ビルが現れる。

その高さに圧倒される一方で、このどこかに和哉さんがいると思うと胸が熱くなる。


「和哉さん、会いたいよ」


ぽつりと思いをこぼしたその時、一台の黒いセダンが私の横を通り、車寄せへと進んでいった。

静かに停止したそれから降りてきた年配の女性の姿に、思わず息をのむ。顔を合わせたことは二回しかないけれど、はっきりと確信がもてた。

女性は和哉さんの母親だと。

入り口へと向かって歩き出した和哉さんのお母さんへ声をかけようかどうしようか迷っていると、やがて前に進んでいた足がぴたりと止まる。

そして、和哉さんのお母さんが振り返り、その目で真っ直ぐに私を捕らえた。

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