見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
傍に控えている秘書らしき男性へ何か言葉をかけてから、こちらに向かってひとりで歩き出した。
和哉さんのことを聞くチャンスなのに、和哉さんのお母さんの表情が強張っているように見えて怖くなり、嫌な予感に足が竦んだ。
「結衣さん、久しぶりね。少しお話がしたいのだけれど、今、良いかしら」
「……は、はい」
私の掠れ声での返事を聞いてから、和哉さんのお母さんが本社ビルから離れるように歩き出した。
怖くて時折手を震わせながら、後ろ姿を追いかける。
どこを通ってたどり着いたのかも覚えてないくらい緊張しながら到着した先は喫茶店。
和哉さんのお母さんがドアを押し開けて先に店内へと入っていくと、同じく五十代くらいの女性店主がにこやかに笑いかけてくる。
「あら、こんな時間に来店してくれるなんて珍しいわね」
「こんばんは。奥の席が良いのだけれど、空いているかしら」
「えぇ。空いてますよ、どうぞ」
「ありがとう。コーヒーをふたつお願いね」
許可を得て、店の奥へと進んでいく。
途中、店主から興味深そうに見られ、私は居心地が悪くなり、顔をそらす。