見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
勝って知ったる様子で店の奥へと進んでいく和哉さんのお母さんを、黙って追いかけた。
向かい合わせで席につくと再び沈黙が落ち、店主が運んできた湯気の立ち上る熱々のコーヒーにも手をつけず、互いに俯いたまま時間が過ぎていく。
重苦しい空気の中、私は勇気を出して問いかけた。
「和哉さんは、元気ですか? ……最近、連絡が取れなくて、どうしたのかなって」
問いかけに反応した和哉さんのお母さんと数秒目が合うが、その視線は気まずそうに逸らされた。
「そう。あの子やっぱり、何も話してないのね。あの子の代わりに謝らせて。本当に御免なさいね。三年もお付き合いしたのに、何も告げずに別れようだなんて無責任なことを」
「……わ、別れって」
聞こえた言葉に心が凍りつく。動揺で、次の言葉がなかなか出て来ない。
「副社長になる前に、しばらくあの子には海外支社へ行ってもらうことになっていたのだけれど、それは聞いていた?」
胸を苦しくさせながら、私は正直に首を横に振る。
いずれ副社長になるという程度で、それがいつなのかも、その前に海外支社へ行くなんて話だって聞いていない。