見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました


「あの子は、今、日本にはいないのよ」


たった三日の出張ですら、私と離れたくないと言ってくれた和哉さんの姿が頭に浮かび、そしてゆっくりと音をたてて崩れ落ちていった。

言葉も態度も、嘘だった。私が見てきた和哉さんはすべて偽りだったと言うことだろうか。


「……どうして」


旅立ったことも、別れたいという思いも、どうして面と向かって言ってくれなかったのか。

いくつもの「どうして?」が頭の中でせめぎ合う。

その疑問に、和哉さんのお母さんが俯きがちに答えた。


「……その……嫌になってしまったみたいなの……お付き合いが。あの子、これを機に連絡を絶って、そのまま別れる考えでいたみたいで」

「そんな。結婚したいって言ってくれたのに。それも彼にしてみたら冗談だったってことですか?」


ハッとしたような表情の和哉さんのお母さんと再び目が合った。けれどやはり視線は逸らされ、躊躇いの後、話し出す。


「言わないつもりだったけれど、伝えておくわ。辛いと思うけど聞いてちょうだい。あの子の傍には、今、女性がいるわ。結婚は……きっと、その子と近いうちにするでしょうね」


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