見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
小さく笑って私も彼に囁きかける。
和哉さんは目を見開いて一歩私に近づき、右手で頭を押さえた。
苦しそうに顔を歪めて、小さく呻き声をあげ、その場に膝から崩れ落ちる。
様子がおかしい。
いや、会った瞬間から様子はおかしかったけどと頭の中で訂正を入れつつ、和哉さんの所まで戻り、彼の肩に手を乗せて顔を覗き込んだ。
「ど、どこか痛いの? 大丈夫?」
顔面蒼白、目は見開き、頭を押さえている右手が大きく震えている。
「救急車、呼んだ方がいい?」
尋常じゃない様子に軽く混乱しながらも、私はバッグからスマホを取り出そうと彼の肩から手を離すが、すぐさまその手を和哉さんに掴み取られた。
「……その必要はない」
言葉とは逆に、彼は苦しげな呼吸を繰り返している。
救急車を呼んで大ごとになるのは避けたいのかもしれないけれど、具合が悪そうな状態の彼を放ってはおけない。
考えを巡らせて、私はそれならと仕方ないと、別の提案をする。
「ヤギサワホールディングスまで行って、誰か呼んできます」
あまり行きたくないけど、そんなことを言ってもいられない。