見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
目だけでなく口もポカンと開けた私に、和哉さんは自嘲めいた笑みを浮かべる。
「……だよな、信じられないよな」
「いくらバツが悪いからって、それはないです。もうちょっとマシな嘘をついたらどうですか?」
一方的に切り捨てた女に無様な姿を見られて気まずかったのかもしれないけれど、だったらそんな嘘などつかず、知らない振りをし続けてくれれば良かったのだ。
「嘘じゃない」
落ち着き払った声で否定して私の手を離すと、彼は前髪をかきあげた。
瞬間、私は息を飲み、額の右側、髪の生え際あたりにある痛々しい傷跡へと思わず手を伸ばす。
「この傷は……いつのものですか?」
付き合っている時に、こんな傷跡はなかった。私を捨てた後、彼は大怪我をしたということになる。
「三年前」
「……三年前」
告げられた言葉に重々しく鼓動が鳴り響く。確かに真新しい傷跡ではないため、嘘ではないと思う。
しかも三年前といえば……。
「結衣の誕生日、仕事で外に出ていたから、終わり次第この公園に向かう予定だった。余裕を持って間に合うはずだったのに、途中で……トラック、が……くっ」