見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
和哉さんが身をかがめて歯を食いしばり、乱雑に前髪を掴む。
その時の記憶がフラッシュバックしているのかとても苦しそうな姿に、私は我慢できなくなる。
「無理に話さなくて大丈夫です」
和哉さんの頭部を包み込むようにそっと抱き寄せて、気持ちが落ち着けばと背中をさする。
やがて、荒かった彼の呼吸が正常に戻り、私はやっと胸を撫で下ろす。
「いや、どうか聞いて欲しい。……きっとたくさん、取り返しがつかないほど深く、誤解させてしまっていると思うから」
「和哉さん」
私も彼の身に何が起こったのか知りたい。……けど、事実と向き合うのが少し怖くもあった。
真っ直ぐな眼差しを一身に受けても、なかなか心が決まらず口ごもっていると、ぼそぼそと交わされる話し声が聞こえ、私はハッとしそちらに顔を向ける。
女性ふたりが私たちをちらちら見ながら、横を通り過ぎて行こうとしている。
傘もささずに彼と密着状態であることに気づき、私は和哉さんからさりげなく距離を取る。
「ひとまず、服を着替えた方が良いかもです。話は……また機会があるようなら聞きますから」