見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
切なげな声音に胸をキュッと掴まれ、自分の選択は間違っていたのかもという迷いが強くなっていく。
「着替えてからアパートを訪ねたら、違う人が住んでて焦ったよ」
「行ったんですか? 私は実家に住んでるので、もうそこには居ませんよ」
「そっか。実家にいるんだな。今から行くから」
「……えっ、ちょっと待って和哉さん」
名を呼びかけた時にはもう通話は切られてしまっていて、失敗したと足を止めて天を仰ぐ。
このまま逃げてしまおうかと踵を返したが、すぐにそれもまずいと思い直す。
和哉さんは私の実家の場所を知っている。
今から行くと言ったからには絶対に来るだろうし、私が居なかったとしても戻るまで待ち続けるかもしれない。
それに、動物園から帰ってきた勇哉と鉢合わせて、自分の子だと気付かれたりしたら、ややこしいことになってしまう恐れも。
和哉さんの両親からまた厄介者扱いされ、今の生活に波風が立つようなことになったら、勇哉を不安にさせたり、家族に心配をかけてしまうかも。
それだけは絶対避けたい。和哉さんが来たらすぐに実家から遠ざけなくちゃと、私は家路を急いだ。