見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
「かっ、和哉さん、家の前で立ち話するのもなんなので、場所を移しませんか? どこかお店に入るか、もしくはもう少し人目のつかない場所に車を止めて、話をしたりとか」
とにかくこの場を離れたい。近所の人に見られる前に車も移動して欲しい。
焦る気持ちを抑えながらそう要求すると、和哉さんはわずかに口ごもってからこくりと頷いた。
「結衣の言うようにしよう。車に乗ってくれ」
今度は私が首を縦に振る。
先に車へと戻っていく和哉さんの姿を見つめていると、久しぶりに彼が運転する車に乗ることへの緊張がわき上がっていく。
運転席に乗り込む前に、和哉さんが動かない私を見て、「結衣」と促した。
慌てて車に駆け寄って、前に座るか後ろに座るか迷った末に、気にしすぎだと開き直って助手席のドアを開ける。
「この辺りに、ゆっくり話ができるような雰囲気の店はあるか?」
自分で言っておいて、該当しそうなお店がぱっと頭に浮かばず、私は「うーん」と小さく唸る。
何気なく窓の向こうに視線を向け、勢いよく顔を逸らした。
隣の家に住む母と仲がいい奥さんが、玄関から外に出てきたのだ。