見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
私が見知らぬ男性の車の助手席に座っているところなんて見られたら、確実に母の耳に入る。
「ひ、ひとまず、出発しましょう」
「……分かった」
言うなり、和哉さんがエンジンをかける。家の前から離れるまで、私は体を小さくさせて俯いていた。
「ひと目が気になるようだな。俺と一緒にいるのを見られてはまずいのか?」
「えっ。その……、あとで色々聞かれたりしたら面倒だなって」
私の返答に彼はちらりとこちらを見て、それきり黙ってしまった。
沈黙に重苦しさと気まずさを感じる中で、通りの先にコーヒーショップがある事を思い出した。
「まっすぐ行くとコーヒーショップがあるんですけど、そこでテイクアウトして、車の中で飲みながら少しだけ話をしませんか?」
提案すると彼は「分かった」とだけ答えて、また黙り込んでしまった。
五分もしないで、目的のコーヒーショップに到着する。
ちょうど駐車場の奥が空いていて、ここなら車の中で話していても目立たないとホッとする。
「私、コーヒー買ってきますね。ホットとアイスどっちが良いですか?」
なかなか返事をもらえず「和哉さん?」と呼びかけると、俯いていた彼の眼差しが私に向けられる。