見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
「以前住んでいたアパートに結衣がいなくて、三年という時間の経過を実感して、怖くなった。……結衣が俺の手の届かない場所までいってしまっているんじゃないかって」
強く手を掴まれた。それがまるで、これ以上遠くに行かないで欲しいという気持の表れに感じられ、胸が苦しくなる。
「実家に住んでると聞いて少し安心したけど、結衣の態度を見てると、もしかしたらって思わずにはいられなくて」
ひとつ息を挟んで、彼がわずかに声を震わせて問いかけてきた。
「結衣は……誰かと結婚してしまったのか? だから俺と一緒にいるところを誰にも見られたくない」
変な勘違いをさせてしまった。一瞬呆気にとられるも、すぐに私は大きく首を振って否定する。
「ちっ、違います! 私は誰とも結婚してません」
「それは本当か?」
「本当です」
きっぱり否定すると、和哉さんの虚ろだった瞳に、力が戻ってきた。
「付き合ってる人は?」
「それも残念ながらいません」
「良かった」
言葉通りホッと息をついた彼に、なんだか私は面白くなくて目を細めた。
「適当に買って来ますね」と言葉をかけてから、ドアに手をかけぽつりと呟く。