見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました

和哉さんのお母さんと話したのも、連絡が取れなくなってから一ヶ月後くらいだったはず。

もしそれが、和哉さんが意識を取り戻した直後のことだったとしたら、……私のことを覚えていないのを良いことに、あんな話をしたことになる。


「結衣。大丈夫か?」


心配そうに和哉さんから顔を覗き込まれ、私は慌てて笑みを浮かべた。


「私はもちろん大丈夫。和哉さんこそ平気? 昔の話をして事故を思い出したりしない? 辛かったら、無理しなくていいよ」


公園で会った時より顔色は良さそうだけどと、私も彼の様子を観察していると、そっと大きな手で頭を撫でられた。


「ありがとう。俺も大丈夫だ」


優しい微笑みと、頭を撫でる感触は昔のままで、鼓動がトクリと跳ねた。

私がはにかみながら座席に座り直すと、和哉さんは太ももの上で指を組んで続きを話し出す。


「それから半年くらい入院して、その後は通院しつつ仕事にも復帰した。ずっと、心に引っかかっている感じがしてた。でもそれが何か分からなくて、思い出そうとするとひどい頭痛に襲われて」

「入院していたのは、日本の病院ですか? それとも海外?」


和哉さんのお母さんの言葉を思い出しながら問いかけると、彼の眉間にしわが寄った。

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