見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました

静かな車内に、和哉さんの苛立ちの声音が響く。

温厚なイメージばかりの彼だからか、怒りを隠さない冷たい表情を目の当たりにし、私はぞくりと背筋を震わせる。


「結衣と公園で別れた後、考えてたんだ。俺が約束をすっぽかしたあと、結衣はどうしたんだろうって。突然連絡がつかなくなってとても不安にさせただろうし、結衣のことだから、心配になって会社か俺の実家を訪ねてくれたかもしれないと」


確かに私はその通りの行動をしている。認めるように和哉さんに頷きかけると、彼は遠くを睨みつけながら、話を続けた。


「両親に会えば事故のことが伝わるはず。けど、結衣は何も知らない様子だったから、きっと会うことができなかったんだろうと思っていたんだが、そうじゃなかった。母さんとは会ったが、まったく違う話を聞かされていたんだな」


それを聞いて、私は項垂れる。あの時は、偶然会えてタイミングが良かったと思っていたけれど、実はそうじゃなかったみたいだ。


「他にどんなおかしなことを言われて、結衣は俺が既婚者だと思い込まされていたんだ?」

「和哉さんは海外で女性と一緒に暮らしていて、その人と結婚する予定だって」


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