見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました


「私にクリーニング代を払わせてください。きちんとお詫びがしたいです」


見つめ合い、数秒の沈黙の後に、彼はすっと息を吸い込み、真剣な面持ちとなる。


「そこまで言うなら、頼みを聞いてもらえないだろうか」

「頼み、ですか?」

「俺の……恋人の振りをしてもらえないだろうか」

「はい?」


まさかの願いに、思わず口が半開きになった。

冗談ですよねと笑い飛ばしたいのに、あまりにも彼の顔が真剣なため、言葉が何も出てこない。


「あの日、店を後にしてから、とある女性と食事をしたんだ。……実はその人と俺の縁談話が持ち上がっていて、俺は正直、勘弁してほしいんだけど、仕事上の繋がりがある上に両親も乗り気みたいで、なかなか断り辛い」

「縁談、ですか?」


理由を聞いて不思議な気持ちにもなる。

目の前の彼はとっても整った顔立ちをしている。背も高いし、今日着ているスーツもおしゃれだし清潔感もある。

縁談なんて受けなくても女性が放っておかないだろうにと、思ってしまったのだ。

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