見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
そう思うならすぐに帰るべきだし、そもそも最初から少し話をするだけのつもりだったと言うのに、こうしてその時を迎えると、なんだか離れ難い。
席を立ち、店を出ようと歩き出すと、入り口近くのショーケースが目につき、私は「お土産に何か買って帰るから、ちょっと待ってて」と和哉さんの腕を掴む。
少しでも長く一緒にいたくて時間稼ぎしているみたいだと苦笑いしつつ、ショーケースの前で足を止める。
勇哉の好きなバナナマフィン、両親と弟には適当に何か買おうと、身をかがめてショーケースの中のケーキに視線を巡らせる。
「バナナマフィンひとつに、えーと……、フルーツタルト三つ」
家族に特に好き嫌いはないはないため、さっき自分が食べて美味しかったフルーツタルトをショーケースの向こうにいる店員に注文する。
「あ、私の分も買っていこう。チーズケーキもお願いします」
「かしこまりました」という返事を聞いて体を起こすと、既に和哉さんがレジの前に立っていた。
私の代わりに支払いをしようとしたため、慌てて隣に並び立つ。
「家族へのお土産なので自分で買います」
「構わない。無理矢理連れ出した詫びのつもりだ」
「その台詞、さっきも聞きましたよ」