見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
先ほどのコーヒーとフルーツタルトの支払いも、今と同じ台詞を呟きながら彼が払ってくれている。
付き合っているなんて言えない関係の彼に払ってもらうのは忍びない。
自分で買いますと粘ってみたが、しかし結局は彼に押し切られ、私は店員から渡されたケーキの箱を手に「すみません。ありがとうございます」と頭を下げた。
店を出たところで、和哉さんが不思議そうにケーキの箱をちらり見てから、疑問をぶつけてきた。
「結衣は四人家族だったよな。ひとりぶん多くないか?」
思わず足を止めると、和哉さんも立ち止まり、私たちは見つめ合う。
「えっ……わ、私が食べるんです。ふたつ」
「ふうん」
苦し紛れに嘘をつくが、和哉さんが納得できないかのように目を細めてくる。
嘘をつくのも辛い。
いずれ勇哉のことは伝えようと思っている。
いずれって、……今じゃだめなの?
自問自答した末、私は深呼吸し、改めて和哉さんと向かい合った。
「もう少し時間ありますか? あるなら、私の実家に寄って行きませんか?」
思いも寄らぬ申し出だったのだろう。和哉さんは驚いたように目を大きくする。