見捨てられたはずなのに、赤ちゃんごとエリート御曹司に娶られました
「隣にいるのが勇哉の父親だって言うなら、今すぐ家に連れて来い。一発ぶん殴ってやる」
怒りに任せるようにそれだけ言って、圭人は一方的に電話を切った。
ぶん殴ると言われて、和哉さんを連れて行けるわけがない。
先に私が家族に、特に圭人と話をしてから、和哉さんを勇哉に合わせるべきだろう。
「……あ、あの、誘っておいてごめんなさい。なんだか今日は……弟の機嫌が悪いみたいで、だから、話はまた後日改めてってことでどうかな?」
しどろもどろで提案すると、和哉さんが苦笑いする。
「結衣の弟は元気がいいな。一発ぶん殴ってやるっていうのは、俺に対してだな?」
「聞こえたぞ」と駄目押しされ、頷いて認めると、彼が手を差し出してきた。
「行こう。こっちはもう既に、二、三発はぶん殴られる覚悟でいるし」
和哉さんの力強い眼差しに、言葉通り覚悟しているのだとわかり、私は迷いなく和哉さんの手を掴む。
「……わかりました。でももし本当に殴られても、記憶だけは無くさないでくださいね」
「それは保証できない」
冗談を言い合いながら手を繋いで車へと戻り、私たちは車に乗り込む。