まだ、青く。
――ガラガラガラ...。


静けさに満ちた空間にドアの音が妙に響いた。

私が顔を上げると、そこには凪くんがいた。


「夏目まだいたんだ...」

「はい...。でも、もう帰ります。凪くんも気をつけて帰って下さい。では、また...」


そう言って凪くんの横を急ぎ足で通りすぎようとすると、私の腕に大きな力が加わった。

私の体は萎縮し、動かなくなった。

鼓動だけがバクバクと激しく音を立てる。

それでも、空気はちっとも美味しく感じない。

すっかり生気を失くした私に凪くんは言葉を紡いだ。


「悩み事...あるんだろ?」


私は重力に従って首を動かした。


「俺に聞かせてくれないか?」


その言葉を聞いた時、

胸にぽちゃんと雫が落ちた。

じわじわと胸いっぱいに広がり、

熱を持ち、

全身に広がっていく。

やがてその熱は、

このどうしようもない思いを言葉にしたいという意思に変わったのか、

気づいた時には口を開いていた。


「私...分からなくなって。自分のことは元から見えないのに、それに加えて周りも...周りの声も聞こえなくなってきてしまって...。私...私、どうしたら...どうしたら良いんでしょう?」

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