まだ、青く。
「夏目?」


耳馴染みの声がすり抜けた。

私は視線の先に彼がいないことを願いながら、恐る恐る振り返った。

が、しかし。


「あっ...」


予想以上のことが起こった。

鼓動がさらに速くなり、バクバクバクバク激しさを増す。

私は咄嗟にしゃがみこんでしまった。


「ちょっと、鈴ちゃん大丈夫?」


千先輩の手が肩に乗るだけでもビクッとなってしまい、もはや通常運転からはかなりかけ離れて脱線した。

もとのレールに戻るためにはどうすれば良いのかと考えたくても頭は真っ白。

思考回路が回らない。

呼吸が荒くなり、鼓動が激しくなり、

このまま天に召されるかと思っていると...。


「夏目」


頭上から優しい声音のシャワーが降り注ぎ、

優しい温度が耳を塞いだ。

私はそっと目を閉じ、すべてをシャットダウンした。

鼓動が落ち着いたら再起動すれば良い。

落ち着け、私。

落ち着け、私...。

そう何度も心の中で唱え続け、ようやく意識を呼び戻し、息を吹き返した。

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