まだ、青く。
私は昊さんの瞳をじっと見つめた。

深呼吸を1つして波風を落ち着かせ、言った。


「あなたからもらった名前があるはずです。
私が受け取った初めてのプレゼントなのに、記憶は曖昧で、16年間夏目鈴として生きてきたから、もう何も...何も覚えていないんです。

だから、もう1度...私に......あなたの娘である私に名前をプレゼントして頂けないでしょうか?」


涙が瞳からこぼれ落ち、畳に染み込んで行く。

いくつも斑点ができ、テントウムシを思い出した。

なぜか私の心に青空が広がった。

そして、

思い出す。

思い出す...。

私が産まれた日のこと。

覚えてなんかいないはずなのに、

おぼろ気な視界では見えなかったはずなのに、

なんでこんな光景が、

目の前に広がるのだろう。

青空を白い鳩が翼を広げて飛んでいる。

テントウムシが私の鼻の先に止まって、

長い人差し指が近付く。

ちょんとつつかれると、テントウムシは窓の隙間から飛んでいった。

私はそれを見てにこりと笑った。


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