まだ、青く。
パンッと弾けた。

私の大声に

凪くんが振り返り、

母が口を切った。


「凪くん...?もしかして、夕さんの?」


凪くんのもともと大きな瞳がますます大きく見開かれる。

その引力に吸い込まれてしまいそう。

でも、何?

何、この感じは...?

夕さんって、

誰?


疑問が渦巻く中、凪くんは蚊の鳴くような声で呟いた。


「母を...四十万夕を、ご存知...なんですか?」


四十万夕さん...。

凪くんの

お母さん......。

確かもう、

この世には......。


「ええ。ワタシと夕さんは...ママ友、だったから」


凪くんは靴に入れた左足を脱ぎ、母の前に座った。

そして、ゆっくりと深く頭を下げた。


「教えてください。何でもいいんです。母のこと...教えてください」


凪くんのサラサラの黒髪を母は優しく撫でながら、夕凪の海を懐かしむように話した。


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