まだ、青く。
「お母さん」

「ん?」


母の瞳には涙が充填していた。

今にもこぼれ落ちそうな涙が床に染み込んで行く前に私は口を開いた。


「お母さんはお母さんだよ。

私はちょっと特殊でお母さんは2人いるけど、どっちも私のお母さんなのには変わりない。

私は2人とも...昊お母さんも、汐莉お母さんも大好き。...大好きなの」

「鈴!」


母は私を抱き締めた。

母の腕がちぎれそうなくらいの力で、

私が潰されそうなほどの力で。

その力は天秤にかけたって釣り合ってる。

どっちも大きくて温かくて優しくて眩しくて...確かな"愛"なんだ。

私が初めて感じた"家族愛"なんだ。

私は母の胸の中で呟いた。


「私、まだここにいたい。お父さんとお母さんの子供で、渉の姉でいたい。もう少し...私が私になるまで...ここにいてもいいかな?」


母は、私の背中をトントンと叩いた。


「もちろんよ...。鈴はワタシの娘。それはずっと、ワタシも鈴も死んだって、その事実は変わらない」


母が力強い言葉を放つと、


「そうだ。鈴はオレの娘だ。これからも永久にな...」


父も賛同してくれた。


「鈴は...鈴は...おれの姉ちゃんだ!最高の姉ちゃんだ!」


渉だって、許してくれた。


母が私を抱き、

父が母を抱き、

父を渉が抱いた。

その温もりは、

どんな薪ストーブよりも、

どんなクーラーよりも、

温かくて優しくて

永遠の温もりだと知った。

これが愛なのだと、

私は初めてこの胸で感じて

この脳で認識して

この口で言葉にした。




「私は皆が......大好き」

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