まだ、青く。
「ミャー、ミャー...」


ポストに投函し終え、帰り道を急いでいた時だった。

急な下り坂の途中で、その声はイヤホンをすり抜け、鮮明に聴こえてきた。

ふと立ち止まり足元を見ると、猫が私の右足にすり寄っていた。


ずいぶん人懐っこい猫...。

でも、この子、なんで私に...。


私はしゃがみこんで猫の首もとを見た。


「あった...!」


私は咄嗟にその首輪に書かれた名前をなぞった。


「キビちゃんのお家を教えてください」


そう口にした途端、わあっと津波のようにイメージが押し寄せてきた。

波の音と海の香りが微かに感じる。

ここからかなり下って港の方だ。

瓦屋根の平屋のお家がキビちゃんの我が家らしい。

ここからはちょっと遠いけど、頑張って届けるか。

この迷い猫を。

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