まだ、青く。
「あの、ウチに何の用ですか?」


ちょうどこの家の住人と思わしき人と鉢合わせしてしまった。

私は両手を豪雨の時のワイパーのように激しく振った。


「ち、違うんです。あ、怪しいものでは決してなくて...そ、そのぉ...」

「ミャーオ、ミャーオ!」


私が明らかに動揺していると、キビちゃんがやって来て足にすり寄った。

こ、これはもしや...

助け船?


「キビが初対面の相手にこんなに懐いてるのは初めてだ。君、マタタビかキビナゴでも持ち歩いてるの?」

「い、いや、そうではなくて...私はただキビちゃんが迷子だったので送り届けたまでです」

「でも、住所なんてどこにも書いてない。どうして分かった?」

「えっと、そっ、それは...」


名前に触れたら見えるんです。


なんて言えない。

どうせ不審がられるだけ。

だったらこのまま振り切って帰った方が良い。


「そんなことどうでもいいですよね?あ、あの、私もう帰りますね!では失礼します!」


勢い良くスタート、のはずが...。

< 8 / 310 >

この作品をシェア

pagetop