まだ、青く。
「うわっ!」


何もないところで躓き、思い切り前に倒れた。


「あぁ、転んじゃった...」

「あの...大丈夫?」


慌てるとろくなことがない。

それは昔から。

周りには敏感なのに、

自分のこととなると急に何も見えなくなる。

感じなくなる。

それが良いわけなくて、

ずっと...

ずっとずっと苦しくて

誰かに話せればなって思ってたんだ。

でも......

無理だった。

変な子だって思われるだけ。

変な子だって無視されるだけ。

変な子だって敬遠されるだけ。

それだけ、だったんだ。

だから私は言わないって決めた。

誰にも私の秘密は言わない。

だって誰もわかってくれないから...。

分かるはずないのだから。


「大丈夫です。すみません...」

「いや、大丈夫じゃないよね?君...泣いてるよ」

「えっ...?」


頬に手をやると、しっとりと手に潤いが甦った。

私...泣いてたんだ。

そうとう痛かったのかな。

痛いとかあんまり感じないから分からなかった。


「膝擦りむいてる。手当てするから中入って」

「いや、でも...」

「キビを助けてもらったっていうのに、このまま君を帰すわけにはいかない。こっちだって困ってる人がいたら助けたい。それくらいの気持ちはある」


その言葉を聞いた時、

なんだろう、胸がふわっと軽くなった。

そして、

水槽に絵の具が1滴ポチャンと落ちた時のように、

私の胸に

鮮やかな淡いピンク色が

広がった気がした。
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