狙われてますっ!
 木々の向こうに打ち上がる花火が見え、それほど時間を置かずに、ドーン、という音がする。

「楽しみですねっ。
 早く見たいですっ」
と汐音は言った。

「あ、あの辺に結構、車溜まってますね」

 道がカーブしているところに、小さな東屋(あずまや)やベンチのある駐車場があった。

「そうだな。
 でも、もう少し上からの方がよく見えるらしいぞ」
と求が言う。

 そういえば、此処からでは近くにある工場の煙突が何本も視界に入って、ちょっと邪魔だ。

 車は更に上へと上がっていく。

「私、こんな近くで花火見るの、子どものとき以来です」
と汐音が喜ぶと、求も、

「……そうか」
とちょっと嬉しそうな顔をした。

 だが、そのまま、チラとこちらを見かけた求は二度見したあとで、叫んでくる。

「お前いつまで脱いでんだっ!
 っていうか、何枚着てんだっ!?」

「えっ?」
と汐音は手を止めた。

 汐音はコートの下に重ね着していたダウンの白いベスト、二枚目、を脱ごうとしていた。




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