竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~
 ジェラールの斜め後ろを歩いていたゴーランが急に足を止め、口を開く。

[嫌な臭いがする]
[え?]

 ミレイナはパッと振り返る。
 ジェラールも立ち止まるとゴーランのほうを振り返り、眉を寄せた。

「今、ゴーランが何か言っていたな。俺に何かを伝えたげに聞こえたが」

 ジェラールはミレイナとは違い、ゴーラン達の喋る魔獣の言葉がわからない。けれど、心の絆の問題なのか、ジェラールとゴーランはお互いに相手が何を伝えたいのかが大体わかるようだ。

「ゴーラン、どうした?」
[微かに血の臭いがする]

 ゴーランは鼻をひくひくとさせると、前方を険しい表情で睨む。そして、突然勢いよく走り出した。

[え、ゴーラン!?]

 ミレイナは驚いて声を上げる。
 ゴーランが走り出したのに気付いた三匹のフェンリル達も、[ゴーラン! どこに行くの?]と言いながら追いかけてゆくのが見えた。

[みんな、待って!]

 ミレイナが叫ぶも、既にその姿は遥か遠くにある。

「ゴーランは何と? 付いてこいと言っているように感じたが」
「はい。微かに血の臭いがするとも言っていました」

 ジェラールに聞かれたミレイナは、ゴーランの言葉を伝える。
< 124 / 244 >

この作品をシェア

pagetop