竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~
「血の臭い?」
「どこかで魔獣が怪我をしているのでしょうか?」
「その可能性はあるな」

 ゴーランの足は速く、到底ミレイナが追いつけるわけもない。その姿を見失いそうになったところを、ジェラールにひょいと抱き上げられた。

「追いかけるぞ」
「え? 重いので下ろしてください」

 突然の縦抱き抱っこにミレイナは狼狽える。

「こんな場所にミレイナをひとり残して行けるわけがないだろう」
「私は大丈夫です」
「いつだか、肉食の魔獣に襲われて木の上でひとりで震えていたのは誰だった?」

 痛いところを突かれてミレイナはぐっと言葉に詰まる。
 かつてミレイナは、食べられると勘違いしてジェラールの元から逃げだそうとして、魔獣の森で肉食の魔獣に襲われたことがある。危機一髪のところでジェラールとゴーランに助けられたのだ。

 あのときの場所とここはだいぶ離れているはずだけれど、肉食の魔獣がいないという保証はない。

(じゃあ、せめて軽くなるように)

 ミレイナはぽんっとウサギ姿に変わる。
 ジェラールは突然変化したミレイナに驚いたようだったが、落とすこともなくその体を受け止める。そして、小さな体をしっかりと自分の胸に抱いた。

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