竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~
「ミレイナのこの姿を見るのは、久しぶりだな」

 胸に抱いたミレイナの毛並みを、ジェラールは愛しげに撫でる。

「よし、走るぞ」

 そう言われた瞬間、ジェラールの速度がぐんと上がるのを感じた。


 
 ゴーラン達がいたのは、小さな池の畔だった。ミレイナは初めて来る場所だ。
 その池の畔で、一箇所を取り囲むように五匹の魔獣達が取り囲んでいるのが見えた。

[みんな、どうしたの?]
[この子、怪我してるの]

 ミレイナが問いかけると、エミーユがこちらを振り返る。その表情は、心なしか不安げに見えた。
 ミレイナはジェラールの腕からぴょんっと大地に飛び降りると、ぽんっと半獣姿に変化する。

「怪我をしていると言っています」
「怪我? 何が?」

 ジェラールは魔獣達を押して隙間を作ると、その中央を覗き込む。

「これは何だ?」

 怒気を孕んだ声に、ミレイナはびくっと肩を揺らす。しかし、その光景を見てすぐにジェラールの怒りの理由を理解した。

「これは……、魔獣を仕留めるための罠?」

 それは、魔獣や動物を捕獲するための罠に見えた。地面に散らばる木の葉に隠すように設置され、近付くと鋭い刃が挟まるタイプのものだ。

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