政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
「も、もう無理っ……出せないです……今日はやめませんかっ……」
「財前さんがんばってー、はい、もう一回」
「無理です……やだぁ……明日、また、がんばりますからっ……」
当然だが、誰も私の意見など聞いてくれない。なにもおかしいことを言っているつもりはないのに、笑って「がんばれがんばれ」と流される。
隣にいる夏樹だけが、今は苦しそうに眉を寄せ、「桃香。あとちょっとだから」と切ない声で励ましてくれている。
ちょうどそのとき、室内にもうひとり白衣の男性が入ってきた。
もうそんなことを気にする余裕はなかったが、助産師さんが「小児科の先生も来てくれましたからね」と紹介してくれる。
「こんばんはー。財前さん、がんばりましょう。赤ちゃんはすぐNICUで診ますから、安心してくださいね」
どうしてNICUに連れて行くの? とぼんやり疑問が湧いてきて、そうだ早産だからだと思い当たり、急に意識がハッキリとした。
無事に産まなきゃ。あと少しなんだから。