政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
夏樹はエプロン型の白衣とマスクを着けるよう指示をされ、彼も緊張の面持ちで、分娩台に寝そべる私の頭の横に立った。
「夏樹……夏樹……」
「大丈夫。もうすぐ会えるぞ」
うなずいて、台に備え付けられた手すりを握る。
心が折れそうになるのと持ち直すのを繰り返し、分娩台に上がってからさらに二時間が経っていた。視線の斜め上に時計が見えており、午後十時を指している。
夏樹は疲れないだろうか。こうやって何時間も苦しむだけの私を見ていて。
「はい財前さん、また力入れてー。がんばって」
「はいっ……ぅあああーーーー!」
もう、自分の下半身のすぐそこに、赤ちゃんの頭があるのがわかる。
一分置きになった陣痛とともにそれを押し出すよう、叫び声を上げる。痛みには慣れた。しかし、いきんでも出てこない絶望感に侵食され始める。