政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

「はい、財前さん、いきんでー」

力を入れるため、叫び声を上げた。しかし、すぐそこの頭は出てくる気配がないと自分でもわかる。
出産は鼻からスイカを出すようなものだという比喩があったが、あながち間違っていない。

だって無理だもの。全然出てこない。何度がんばっても、産める気がしない。
鼻からスイカが、出るわけないでしょ! それと同じ! 無理言わないでよ!

「無理……本当に無理なのっ……もう許して……」

力を入れることを諦めると、手は震えながら手すりを離れた。
すると、右手が誰かに取られた。顔をずらして見上げると、今度は夏樹が泣きそうな顔で「桃香!」と叫び、両手で握りしめている。

「がんばれ! お前ならできるよ!」

「夏樹ぃ……」

「愛してる! 俺がずっと守ってやるから!」

繋がった手が、力強くて温かい。彼の力が流れ込んでくるようで、私はもう一度だけ、気持ちが奮い起った。
< 101 / 113 >

この作品をシェア

pagetop