政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

この時点ですでに不倫の二文字が消えかかってきたが、夏樹は淡々と、腕を組んだまま説明を続ける。

「飯田さんは旦那さんのこと尻に強いてたから、妊娠中はワガママばっかり聞いてもらってたって言っててさ。桃香に見習ってほしかったのはそういうところ。もっと俺にワガママ言ってほしかった」

「……そ、そうなんだ」

「俺も桃香には言えなかったが、ずっと悩んでたんだ。ちゃんと桃香の役に立てるか不安だった。発散っていうのは、飯田さんにそういう弱音を吐いてたって話で」

「……は、はい」

どうしよう、私の勘違いだ。ううん、もしかしたら誤魔化されている可能性もある?
バツが悪くなってそう反発してみるが、私を見つめる夏樹の熱い視線に、なにも嘘はないと直感でわかった。

それに、わかっていた。夏樹は嘘をついて私を裏切るような人ではない。私が一番、よく知っていたのに。

「……ご、ごめんなさい。夏樹」

「いいよ、もう。……なあ。桃香」

「わっ」

握られた手を引き寄せられ、胸板に頭がコツンと付いた。
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