政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
夏樹の心臓の音が聞こえる。こんなに大きな音がしているなんて、知らなかった。
「そういうことだから。もうずっと前から、俺には桃香だけなんだよ」
「……う、嘘。ずっとは嘘でしょう。昔は好きな人がいたじゃない」
「ああ?」
「聞いちゃったのよ、生徒会のとき。好きな人がいるけど恋愛対象に見られてないから、私と結婚するって」
じっと疑いの目を向けると、彼の頬は赤く染まる。
「それはお前のことだよ、バカ!」
「……夏樹」
ああ、嘘でしょう。夢みたい。
「俺は待ってるから。すぐには無理かもしれないけど、お前に好きになってもらえるようにがんばるから。……だからまだ、俺の奥さんでいてくれよ。好きなんだよ、桃香。お前と別れるなんて、できねえよ」
私の頭を抱いていたのに、今度は夏樹の頭が私の肩へと落ちてくる。ふわっとした前髪を擦り付けられ、猫のような愛くるしさを感じた。
私はたまらなくなって、その頭に手を添える。
そして、涙で消えてしまいそうな声を振り絞り、
「……私もよ」
とつぶやいた。