政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
車は青信号で動き出す。夏樹はなんてことはない笑みを浮かべているが、私は窓に映る悲しそうな自分を見つめた。
「……全然違うわ。美砂は恋愛結婚だもの」
気丈に振る舞うつもりが、声は震え、不自然に掠れた。
隣で夏樹はため息をつき、呆れたような声色で、
「べつに関係ないだろ。結婚しちまえば夫婦なんだから、同じだよ」
とつぶやく。
あなたはそうなんでしょうけどね、と窓の私は眉根をひそめた顔になった。
私は夏樹とは違う。好きでもなんでもない人と結婚できるほど、物わかりのいい女じゃない。
ただの腐れ縁で私と結婚し、子作りまでできるなんて、夏樹の方がおかしい。
……気味悪がられるだけだから、この気持ちは一生、夏樹には言えないけれど。