政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
周囲からの悲鳴に近い「キャー!」という叫び声。
触れるだけのキスを終えると、その距離で彼の瞳が揺れた。
「いつもこうしたら仲直りしてくれるだろ。……な?」
ペパーミントのような彼の香りに、私は頭が真っ白になった。いつもこんなことをしている記憶はない。
それどころか、記憶違いでなければ、今のが私たちのファーストキスだ──。
「あのときの夏樹くん、本当に素敵だったよね~!」
両手を頬にあててうっとりしている美砂に、意識がハッと戻る。そして申し訳ないが、あれはすべて夏樹のパフォーマンスだったのだ。
噂を聞きつけた夏樹が火消しのために公開キスをしたのだと、後から知った。
あのファーストキスを境に、私は夏樹の隣にいると平常心ではいられなくなった。
昔から、なんだかんだで夏樹より素敵だと思える男性はどこにもいなくて、格好よく見える瞬間もあって、一緒にいて楽な気もしていた。その気持ちがなんなのかよくわからずにそばにい続けていたところで、いきなりのあのキス。
夏樹のキスひとつで守られた私の立場に、〝私は夏樹のものなのだ〟と強く感じた。