政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
無意識に、隣に立っている夏樹の袖を掴んでいた。
これは、彼も喜べない状況だろう。そんな皮肉は一瞬で消え去り、安全なお産ができない可能性があると知り怖くてたまらなくなった。
早産にはさまざまなリスクが伴うため、できるなら三十七週以降に生まれる正期産での出産がしたい。まだあと十週以上ある。それまで持ち堪えられるのだろうか。
「先ほどご主人様がおっしゃっていたように、すぐにでも安静に過ごす必要があります。奥様がご実家でも無理をされてしまうのなら、入院することをお勧めします」
「入院……」
自分の体の異常にまったく気づいていなかった。お腹が張るのは当然だと思っていたが、まさか赤ちゃんを危険に晒していたなんて。
つわりがあった頃は体重を減らすために常に動いていて、なくなってからもよき母になれるように弱音を吐かずがんばろうと無理をしていたことが仇となったのだろう。
「……ごめんなさい、夏樹……私……」
「なんで桃香が謝るんだよ。俺も、もっと早く気づいてやれればよかったんだ」
夏樹は悪くない。いろいろなことがあって意地になっていた私の責任だ。
これまでの八か月、いったい私はどうすればよかったのか。
安全に産んであげられないかもしれないなんて、予想していなかった。なんてことをしてしまったのだろう。