政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

その場で入院が決まった。荷造りに一度自宅へ戻り、再度産婦人科の病棟を訪ねる。

実家で母になんでもしてもらうのは気が引けていたため、いざというときに病院にいた方が安全だから入院してほしいという夏樹の意見をすぐに聞き入れた。

夏樹の言うことはちゃんと聞こう。
私は無事に赤ちゃんを産むことだけを考えなくては。
秘密で飯田さんと会っていたって、気にしたらいけない。

半袖の白衣を着た看護師さんに個室を案内してもらい、夏樹が「いい部屋じゃん」と明るく振る舞いながら、黒のトートバッグの中身を片付けていく。
私は大人しく、真ん中のリクライニング機能がついたベッドにすぐに横になった。

白で統一された明るい室内には十分な収納があり、家族用の簡易ベッドが畳んで立てられている。不自由なく安静に過ごせ、陣痛が来たら旦那さんとそのときを迎えられる安心できるスペースだ。

きっと夏樹がここで寝ることはないと思うけど。

「おいおい、桃香。なに泣いてるんだよ」

ホロリと零れた涙がベッドのシーツに落ちた。言われてから気づき、慌ててハンカチで拭う。

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