政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

「泣き虫だな、桃香は」

隣に立たれたかと思うと、次の瞬間には頭を抱き寄せられていた。
いつもの夏樹の爽やかな匂いに頭がボーッとするが、同時に切なくてたまらなくなる。

「大丈夫だって。しっかり安静にしてれば心配ないって先生も言ってただろ」

「うん……」

「俺も週末は毎回通うし、接待がない日は平日も面会に来るから。荷物とか洗濯とかあるだろ?」

「えっ……そんな。大丈夫だよ、荷物はお母さんに頼めるから」

夏樹を心配して言っただけだったが、彼は口をへの字に歪めた。

「お前の荷物はうちにあるんだから俺でいいだろ。俺だって様子を見たいんだ。ここまできて遠慮すんなよ」

必死になる夏樹を見ていると、まるでお腹に彼の人質を抱えているようだ、と感じてしまう。
赤ちゃんを大切にしようとすれば、私もセットでついてくるだけなのだ。
< 74 / 113 >

この作品をシェア

pagetop