政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~
「な、に、言ってんだよ……。おい、ちょっと、マジでおかしくなってるのか?」
今度はうっすらと引き笑いをしている。さすがに、驚いたらしい。
「なにもおかしいことを言っているつもりはないわ。本気よ」
「……入院生活で思い詰めてるのか? いきなり、冗談やめろよ」
「入院は関係ない。最初からずっとよ。ずっと悩んでたの。愛のない結婚したときから、妊娠したときも、今も。別れるべきだって何度も考えてた。……ようやく、決心が着いたの」
すでに滝のような涙が流れているが、本気だと伝えなければと必死に言葉を紡ぐ。
「もちろん、この子のことは、いろいろと夏樹とご両親の納得がいくように相談していきたいと思ってるわ。夏樹は父親だもの」
彼の顔を見る余裕はない。
「でも、愛のない夫婦を続けるのは私には無理だったみたい。……ごめんなさい。今まで私なりにがんばってみたけど、このまま夏樹の奥さんは続けられない」
やっと一番の気持ちを言葉にでき、顔を上げた。
潤んだ視界のせいで、夏樹の黒髪の輪郭だけがぼんやりと見えている。
大粒の涙がポタリと落ち去ると、それは急にクリアになった。
その瞬間、泣きそうな彼の顔がはっきりと現れ、心臓がバクンと音を立てる。