政略夫婦の懐妊一夜~身ごもったら御曹司に愛し尽くされました~

まるで夢の中のように意識がぼんやりとしてくると、助産師さんに「どれくらいかな」とベッドの足の方から手を入れられ、探られた。

「いやぁああーーーーー!!」

指を入れられ、子宮口を計られる鋭い痛みに叫び声を上げる。
この瞬間だけ仕切られるカーテンの外から、夏樹の不安げな表情が感じとれた。もう、一緒にいすぎて、見なくてもわかる。

カーテンの向こうに「この痛み、夏樹にはわからないでしょう」と念を送っている自分がいて、痛みで頭がおかしくなりそうなのに清々しい気持ちになってくる。

「もうやだ……夏樹のバカァ……」

気付けばそれしか口から出てこない。カーテンの向こうにからは「もうちょっとだぞ桃香」という無責任な応援が聞こえ、なんだかもうおかしくて、フッと吹き出した。

するとお腹の中でパツンと音がし、体から水が流れ出ていった。
足の間から見える助産師さんはウンウンとうなずいており、

「子宮口九センチです。破水しましたよ。これから分娩台に移動します」

その掛け声とともに隣の部屋への扉が開かれ、ライトアップされた堂々たる分娩台に、準備して入室してくる先生と数人の助産師さんたちに迎えられた。

怖い。心臓が、痛い。
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