死にたがりな君と、恋をはじめる
ようやく納得する。
下手に何かを言うわけにはいかなくて黙っていると、田中はフッと自虐的に笑ってこちらに顔を向けた。
「どう、可哀そうな子だって、哀れに思う?」
「……別に」
田中の問いにそう答えると、田中は前を向き「あっそう」と呟いた。
そうしているうちに、友馬くんたちが帰ってきて、何かを手渡される。
「はいっ。奈月お姉ちゃんっ。これあげる!」
「え、これ……ストラップ?」
それは、大きなリボンが特徴のこのドリームランドのマスコットキャラクター『ゆめくま』のストラップだった。
友馬君のキラキラとした瞳で見上げられて、私は戸惑う。
友馬君のお母さんは、少し眉を下げた。
「すみません、違うものを買おうとしていたのですが、恩人さんにプレゼントするならこれがいいと、友馬が言いまして。それも、ペアのものなんです……」
「ペア……?」
私はしばらく首を傾げていたけど、ハッと気が付いて、友馬君の顔を覗き込んだ。
「これ……片方は、レイの?」
すると、友馬君はこくんと大きくうなずいて、それからにこっと満面の笑みを浮かべた。
「僕を助けてくれてありがとう、奈月お姉ちゃん。……それと、レイお兄ちゃん」
『俺も?』
レイは目を大きく見開き、それから友馬君の頭をくしゃりと撫でた。
『どういたしまして。もう迷子になるなよ』
友馬君は声に出さずに小さくうなずくと、大きく手を振った。
「ばいばいっ。奈月お姉ちゃん! また会おうね!」
友馬君はきっと、レイの存在がばれないように気を使ってくれたんだと思う。
本当に賢い子だ。
私も手を振り返すと、友馬君を見つめた。
友馬君は、お母さんと田中に抱き着いて嬉しそうに笑っている。