死にたがりな君と、恋をはじめる
神様……私を見ておいてください。
私が逃げないように、どうか見張っておいてください。
心の中で願いを再度唱え、目を開いた。
最後に深いお辞儀をすると、カバンを持ち直す。
階段を降りつつ、レイが横に並んでくる。
『奈月ってさ。非現実的な存在を信じないんじゃなかったっけ?』
「え? そうだけど」
レイの疑問に首を傾げて頷くと、レイはじとーっとこちらを睨んだ。
なんでそんなこと聞くの?
そんな風に思って、言葉を待っているとレイは頬を軽くかいた。
『いや、だってさ。俺と初めて会った時、幽霊とかは信じないって言ってたでしょ』
「あぁ……そのことね」
私は少し息をつく。
「幽霊と違って神様は古来より信じられているものだからね。神様を信じないと罰が当たりそうだし……」
『え、幽霊も昔から信じられているよね? 差別発言ですか?』
少し眉を下げ、片手をマイクのように突き出してくるレイに、私はうっとうしくなって手をひらひらと動かした。
「ち・が・う。……それに、神社に来たのは昔からの癖みたいなものだから」
『癖?』
不思議そうに首を傾げたレイに、私は軽く頷いた。
「そう。……うちではなぜか、『困ったことがあったら神様に会いに行きなさい。そうすれば願いを叶えてくれるから』って教えがあったんだよね」
『へぇ~。珍しい教えだね。両親は仏教徒か何かだったり?」
「いや、知らないけど……。まぁ、家を出てもこういう昔から言われ続けてたことは癖になって、今でも現れてくるんだよね」