君、思う。[短篇]
「え、愛莉?」
クラス中に響いた声。
集まる視線。
そして、団体様から顔を出す浩介。
「っ」
む、無性に恥ずかしい。
多分、私顔真っ赤…。
集まる視線に耐え切れず
私の視線は自然と下へ下へと下がった。
「あ、これが噂の愛莉ちゃんか!」
ぅえ!?
頭の上から急に聞こえてきた声。
それは浩介なんかじゃなくて
知らない男の子数人。
いや、正確に言うと浩介とさっきまでじゃれあってた友達数人。
「あー、浩介の言った通りじゃん。」
「浩介の気持ちが分かったわ。」
私をジロジロ見た後
口々に言葉を漏らす人たち。
な、何!?
少し香る香水の匂いと
180以上ある身長に自然とすくむ私。
ってか!
浩介は何処にいるのよ!
数人の男子に囲まれる形になった私は、もはや周りが壁状態。浩介の位置を確認することなんか出来るはずもなかった。
「愛莉ちゃん!俺、悠。よろしくねー」
「あ、はぁ。よろしくね?」
目の前に立っていた男の子が私に片手を差し出した。
コレは…
握手、だよね?
一瞬合った視線。
ひらひらと動く手。
私は右腕を伸ばした。
「ハイ。スットプ。」
「こ、浩介!」
伸ばした手は、握手を求めてきた人とは違う人によって包まれた。
にっこり笑うその顔は
いつもと同じ。
なのに、何処かいつもと違う。
…怒ってる?
「ヨロシクしなくて良いし、握手する必要もナシ。」
「え、でも」
「いいの。」
浩介によって包まれた私の手が
少し力強く握られた。